名も知らぬ詩、2004年 ②

_____________
・ビターチョコレイト


憐れみも 慰めもほしくない


無口なあなた

もうすこしだけ ここにいて

 


_____________
・マフラーも忘れて


あんなに勇ましく
とびだしていった君だけど

あの辺りで
心細くなっちゃって
ベソかいてる頃でしょう

お腹だって空いてるでしょう


ご飯 もうすぐ炊き上がるし

帰っておいで


笑ったりしないから

帰っておいで

 


_____________
・転んじゃった


びっくりしたけど
なんともないよ


あの角を曲がると
大きな門が きっと開いてて

今日こそ
逢えるかもしれないんだ

 


_____________
・風


失うことをおそれずに

白い花
青い花
緑の花


ねぇ

失う ってどういうこと

 


_____________
・淡い緑の便箋を


あのときの あなたは


叫んでいましたね
声にならない声で
神はどこにいるのかと

期待していましたね
正しさにすがり
審判をもとめて

ちいさく 震えていましたね
最前線に赴く兵士のように
悲壮な覚悟で

失った気で いましたね
靴跡だらけの
じぶんの影をみつめて

手放そうとしていましたね
荒々しい波に耐えかねて
ひとつしかないものを

ひどく 驚いていましたね
この言葉の
源泉はどこなのかと


その道の先

あのひとが
微笑みをたたえて 待っているとも知らずに