名も知らぬ詩、2004年 ① 

_____________
・空


じぶんにしがみついたり
鎖でつなぐことをやめてから

空が ひろくなった


水は甘くなり
鳥は柔らかになり
風はふさわしい時を知らせる

緑はそっと隣りにきて
あたらしい歌をうたう

目の前には はじめての

 


_____________
・晴海通り (※昭和通り ??)


午後のバスは
暖かなゆりかご

君の眠るあいだ
わたしどんなこと考えていたかしら

わたしの眠るあいだ
君はどんなふうにしていたかしら


歌舞伎座 松竹セントラル 三原橋

ここまでくると
あとは早いね


つぎは 銀座四丁目三越前

『降ります』押します?
でも どうしよう 君はまだ


小さな寝息を抱いたまま
ゆりかごは四丁目を過ぎて

 


_____________
・祈るように耳を

 

あの瞬間とわたしとのあいだに割り込むものすべて
とりはらうことができたら

 

_____________


泣きはらして
すこし幼くなった朝


みかんゼリーのむこう
淡雪のようにあなた

 


_____________
・雪だるま


どうか
もう離れて

そんなに抱きしめられたら
溶けてなくなって
あなたに逢えなくなるでしょう

 

_____________
・朝の光


いま

あなたと 溶けあい

ひとつの魂となって 昇る


まぶしさのなかへ

 


_____________
・無愛想な友達


苦い珈琲を淹れて

ミルクたっぷり
お砂糖ひとつ


どの頁から読もう

前髪ゆらす
古い活字のにおい


どの頁だろう

頬杖で宙にもとめる頃
そっと示す褐色の