名も知らぬ詩、2004年 ①
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・空
じぶんにしがみついたり
鎖でつなぐことをやめてから
空が ひろくなった
水は甘くなり
鳥は柔らかになり
風はふさわしい時を知らせる
緑はそっと隣りにきて
あたらしい歌をうたう
目の前には はじめての
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・晴海通り (※昭和通り ??)
午後のバスは
暖かなゆりかご
君の眠るあいだ
わたしどんなこと考えていたかしら
わたしの眠るあいだ
君はどんなふうにしていたかしら
ここまでくると
あとは早いね
つぎは 銀座四丁目三越前
『降ります』押します?
でも どうしよう 君はまだ
小さな寝息を抱いたまま
ゆりかごは四丁目を過ぎて
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・祈るように耳を
あの瞬間とわたしとのあいだに割り込むものすべて
とりはらうことができたら
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・
泣きはらして
すこし幼くなった朝
みかんゼリーのむこう
淡雪のようにあなた
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・雪だるま
どうか
もう離れて
そんなに抱きしめられたら
溶けてなくなって
あなたに逢えなくなるでしょう
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・朝の光
いま
あなたと 溶けあい
ひとつの魂となって 昇る
まぶしさのなかへ
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・無愛想な友達
苦い珈琲を淹れて
ミルクたっぷり
お砂糖ひとつ
どの頁から読もう
前髪ゆらす
古い活字のにおい
どの頁だろう
頬杖で宙にもとめる頃
そっと示す褐色の