・麦わら帽子 /2004年4月、NHKライブビート(サンボマスター)。お姫様スカート 

2005.8.31
 朝。こんな格好(Tシャツとパンツ)でまずいかな、大丈夫よね。と朝刊を取るために玄関ドアを開けると、目の前にアフロヘアの男の人。 ひっ、と口に手を当てて硬直。そろーっとドアを閉める。 隣りの人かな。ちょうど廊下を歩いてきたんだ。よりによって、なんてタイミングだろう。み、見られた? いや、わたしの「ひっ」のほうにギョッとしてたみたいだし、見られてはいない。 どうしようどうしよう、失礼なことしちゃった。「俺のアフロヘア、そんなに怖いのかな……」と傷ついてるかも。ちがくてそうじゃなくて、こちらの事情によるものなんです、と胸の中で弁解。こんど遭遇したら曖昧に会釈ぐらいしておこう。 あぁびっくりした。

 

 午後。買物から帰宅して鏡の前に立ち、値札のついた麦わら帽子を合わせてみる。夏も終わりなのにね。両手でそっと帽子をおさえる。あ、前がみえない。 そういえばこの夏はスカートを穿かないでしまった。子供サイズのミニも生成りの膝丈ギャザーも白いお姫様スカートも。夏になったら着ようと楽しみにしていたそれらは、クローゼットの中でしんと眠っている。

 

 白いお姫様スカートはたしか昨年のあの日(NHKライブビートサンボマスター/ラジオで放送されるライブ収録の観覧)に穿いたきり。まだ四月で肌寒い日だったけれど、可愛くしていきたくてあれにしたのだった。 轟音と静寂とが同時に存在するあの不思議な空間で。素肌をしゅるしゅるすべる裏地と足首に触れるさらさらの生地を感じながら、この音はなんだろう、この空気はなんだろう、と戸惑っていた。 楽器の残響音は波紋のようにあるいは眩暈のようにわたしを捉え、床を見つめさせた。床をみつめながら、その床に沈みこみそうな感覚に陥りながら、思ったんだ。どうしてわたしはここにいるんだろう。どうしてわたしはここで聴いているんだろう。なぜわたしは……。って。